立川志らく氏の炎上について

連日報道されている件の児童虐待死事件については、またか、という暗澹たる気持ちでいます。

それに関してのコメントで立川志らく氏が炎上されているとのことです。はてなのトップブコメを見ても志らく氏に肯定的なコメントは見当たりません。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

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要するに、「志らくの発言は精神論、根性論だ。それでは児相問題は解決しない。リソースの問題である。」ということでしょうか。

炎上元となったツイートはこちらです。

 

このツイートだけを見ると、確かに引っかかるものがあります。根性論であると同時に、リソース論を否定しているように見えるためです。

ですが、他のツイートを見れば発言の意図が分かります。

 

 

 

彼はリソースについては議論の対象としていないのです。リソースが足りていたとしても今回の問題は起きただろうとの暗黙の仮定を置いていると言ってもいい。「数の問題じゃない」というのはそういう意図です。「俺はそれをここでは議論の対象としない」ということです。

(「じゃあそう書けよ」というのはその通りですが、私は他人のツイッターでの発言にそこまでの厳格性を求める気にはなりません。)

 

「その仮定は間違っている。リソースが足りていれば今回の問題は起きなかったはずだ。リソースのみが議論の対象とされるべきだ。」

と、確信を持って断言できる人はいますか?勿論、問題が起きるリスクは減らすことができるでしょう。そう考えるのが自然です。でもゼロにできるかというと断言はできない。それは「心の問題」が存在するからです。志らく氏は、今回の件についてはこちらを深刻に考えて発言した。それだけのことです。

 

「それこそが根性論、精神論だ。心の問題を語る前に、リソースの問題を解決しなければならない。」

そうかもしれません。でもどちらも問題であることには変わりありません。どちらかだけについて発言したからといって、その発言が間違っているかどうか、不適切かどうかは判断できないはずです。

 

ということで私は志らく氏擁護派です。

プロテイン@バンコク

タイではペットボトル入りプロテインが何種類か売っています。中でも市場でドミナントとなっているのは、明治が財閥企業CPと組んで発売したこちらでしょう。49バーツ(約170円)でプロテイン25g含有、3種類のフレーバーがあり、味も美味しいと思います。バンコクから車で2時間程度の範囲のセブンイレブンであればまず置いています。

(以前はコーヒー味もあったのですが、公式サイトを見るとなくなっていました。私はチョコの方がおいしいと思っていたので困りませんが。)

 

cpmeiji.com

 

 

他メーカーも同じような商品を出してはいますが、CP明治が値段・入手しやすさともに1位でした。他は10~20バーツは高い印象です。

 

 

そんな中、マーケットブレイカーとでもいうべき新星が現れました。Ducth Millです。なぜか公式サイトはありません。

www.facebook.com

 

値段なんと39バーツ(約140円)。セブンイレブンでしか手に入らないようですが、タイではそこら中にあるので大丈夫です。今プロモーションに力を入れている(CMがよく流れる)ので店によっては35バーツとかになってたりします。味も普通においしいです。完全にCP明治をやっつける気です。

 

 

なおバンコクでコスパにこだわってプロテインを入手したい方は通販を活用しましょう。ブランドにこだわりがなければPROSTARというのが良さそうです。セール時を狙えば(大体毎月やってます)5lbsで2,000バーツを切ります。79 Serveなので1 Serveあたり24バーツ、100円を切りますね。

 

www.musclefoodshop.com

 

OPTIMUMがいい!という方もありますのでご安心を。今は5lbsで2,100バーツちょいですね。PROSTARと大差ないです。

www.musclefoodshop.com

 

ちなみにiHerbは重量制限に引っかかって5 lbsはデリバリー不可です。もう一回り小さいサイズでも確かダメ。ビタミン等の小さいサプリを買うのに使っています。

 

タイからシンガポールへ行ってきました

大分前になりますが(10月)、連休を利用してシンガポールへ旅行してきました。タイは10月に連休が多いのです。

 

  • バンコク→シンガポールへ

バンコク市内から車でスワンナプーム空港へ。連休前夜ということもあり道路は渋滞。運転手に飛ばしてもらったものの1時間半近くかかりました。

利用したのはScoot。シンガポール航空傘下のLCCです。日本へ一時帰国する際に何度か利用したことがあり、LCCの割に機体が広かったので比較的良い印象を持っています。Skyscannerで最安値だったので選択しました。他のLCC同様、席の選択、機内食、受託手荷物には追加料金がかかります。

ベビーカーについては搭乗ゲートまで持ち込みが可能です。空港到着後は通常の受託手荷物と同様、荷物受取口(ベルトコンベア)から出てきます。チャンギ空港は着陸後すぐに受取口がありますが、スワンナプーム空港はかなり歩かされるので疲れます。

Scootは予想に反して3・3列の小さい機体でした。子連れで2.5時間はまあまあ疲れます。日本行きのは3・4・3列くらいだったのですが、近距離だと小型機なのでしょう。

 

  • チャンギ空港→ホテル(Orchard)へ

空港は清潔かつ動線がスッキリしていて、着陸→荷物ピックアップ→イミグレまでは驚くほど速く済みました。イミグレの前に荷物ピックアップができるのは、ベビーカーを預けた身としては助かります。タイでは順序が逆の上、着陸からイミグレまでの距離が長く、イミグレも長蛇の列だからです(幼児連れはPriority Laneでショートカットできますが)。

イミグレを出た後はタクシー乗り場ではなくPick Up Area的な場所に向かいます。Grabを利用するためです。タクシー乗り場は長蛇の列です。

Grabを利用するには通信手段が必要で、きっとWi-Fiがあるだろうなと思いつつ、事前にタイのAISでFly2Simを買っておきました。8日間4GB で399THBです。「シンガポール SIM」でググると、もう少し安いSIMも現地で調達できそうでしたが、100THB程度の差ですし、利便性を考えてタイ国内で買っておいた方が良いです。

 

www.ais.co.th

GrabでOrchardにあるホテルまでは23SGDでした。空港に着陸したのは0時を回っていましたが、待ち時間もなく、20分ほどでホテルに到着しました。

 

  • シンガポール内の移動はGrab

移動は全てGrabを使いました。世界遺産のBotanical Garden、マリーナベイサンズやGardens By the Bay、セントーサ島などに行きました。一日3~4回乗車×3日間で126SGDでした。タイで3,000THBの交通費と考えるとかなり高く感じますが、日本で10,000円と考えるとリーズナブルです。MRTやバスなどを使えばもっと安上がりにすることは可能でしょうが、チビを連れての旅行ですので致し方なしです。

ちなみに、何人目かの方に「お前の子どもは7歳未満だろ?そしたらGrab Carは違法だぜ。シンガポールの法律ではBoosterがないと乗せちゃいけないんだ。Boosterがある車はGrab Familyで呼べる」と言われました。シンガポール訛りで聞き取りづらかったのですが、調べたら確かにそういう情報が出てきたのでそうなのでしょう。

 

www.tabiwaza.jp

運転手は無愛想な方が多いと感じていたのですが、こちらがルール違反をしていたので快く思っていなかったのかもしれません。すまん。

その点は反省するとして、このルール、けっこう意味不明です。4~7歳はBoosterがないと乗せちゃいけないというのですが、そのBoosterというのがベビーシートと思いきやなんかよく分からない器具なんですよ。これをお尻の下に引いてシートベルトして終わりです。これで普通のシートベルト以上に劇的に安全性が高まるですかね。シンガポールの法律ですからちゃんとしているとは思いますが、面倒くさいですね。

 

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www.grab.com

 

料金も通常のJust Grabより1~2SGD割り増しされます。先のブログでは「夕方・日中のピーク時でも市内中心部で2~3台、朝や夜になるとほぼチャイルドシート設置車は走っていませんでした。」とあります。私がこれに気づいてGrab Familyを使用したのは最終日の平日、朝・昼のみでしたが、すぐに捕まえることが出来ました。法律が浸透してきて、対応する車も増えてきたのかもしれません。

 

  • ERPについて

もう一点面白かったのがERP(Electric Road Pricing)という制度。日本の高速にETCってあるじゃないですか。あれが街中にあるのですよ。一台一台ゲートに通るのではなく、道路全体にドカーンとゲートが設置されてて、その道を通る全ての車からピッピッと徴収していきます。時間帯によって料金が変わるようで、Grabの料金に上乗せで請求されますので思ったより高いなと思ったらたぶんこれです。ETCを入れてなかったらどうなるのか?カメラでナンバーを抑えられて後日請求されるとのことです。カードの入れ忘れならそこで支払えば終了。

ERP (シンガポール) - Wikipedia

シンガポールのロードプライシング(ERP)|東京都環境局

 

シンガポールらしい何とも合理的な制度です。タイでは普及しないでしょうね。タクシー代が上がるくらいなら渋滞した方がマシ、と思う人の方が多そうです。

 

炎上する松本人志さんについて

私は松本人志さんがかなり好きです。今でも毎日通勤中に『放送室』を聞いています。

大ファンというわけではありません。『4時ですよ~だ』も『ごっつええ感じ』も見たことありません。『笑っていいとも!』や『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』、『リンカーン』などで時々見かけていましたが、彼が好きだから見ていたわけではありません。

じゃあどこでこんなに好きになったのかなと思い返すと、やはり『放送室』なのだと思い至ります。学生時代、iPod等のmp3プレイヤーが発売され、YouTubeがサービス提供を開始した頃です。その時に何かの記事を読んだのか、友達に教えてもらったのか、YouTubeにアップされているこの動画が面白いぞということで『放送室』に出会ったわけです。聞いてみると、ただの緩い会話なのに笑いを堪え切れないほど面白いことに衝撃を受け、色々なソフトを組み合わせてmp3プレイヤーで毎日聞きまくりました。通学中、移動中、つまらない授業中、ずっとです。*1

 

それ以降、私は彼に一目置いています。偉そうに言いますが、本当にそういう感じです。そのような立場から申し上げます。

 

今回の件は、アイドルが自殺したという事案に対して彼が述べたコメントが、「マッチョ思考」「自己責任論」であり、「弱者に寄り添っていない」「死者やその遺族に鞭打つ行為である」「自殺を考えるほど追い込まれた人間にかける言葉ではない」として炎上している(彼を非難するツイートや記事がたくさん出ている)、というのが私の認識です。

非難している内容に共通する点として、彼の発言の受手として、自殺した本人、遺族、および今自殺しようと悩んでいる方(潜在的自殺者と仮称します)、この3者を想定されているのではないかと思います。

(この3者に対して)「死んだら負け」と言うなんて、酷い!鬼! ということです。

 

彼が言葉を投げかけているのはそういう方々ではなく、特に今自殺しようか悩んでいない、大多数の普通の人々だと思います。「子どもたち」と言ってしまっても良いかもしれない。

ご存知のように彼には娘さんがいます。小学生くらいでしょう。今回の事件で、娘と重ね合わせてないわけがないんですよ。これから無限の可能性がある子どもたち。そんな子どもたちが大きくなって、夢を追って、その末に自殺してしまう。こんな悲しいことはないですよ。その悲しさを彼も噛み締めてますよ。そうさせた大人たちに憤ってますよ。その上での「死んだら負け」なんですよ。無念、諦念、嘆息。打ち勝たないといけないとか、負けるなとか、そんなこと言ってませんよ。今生きている子どもたち、明るい未来に開かれた子どもたちに対して、「死んだら負け」っていうシンプルな言葉を突き刺しておこうということじゃないですか。これからどんな苦難に遭ってもそのシンプルな言葉を思い出せるように。だからその後もこう言ってるんじゃないですか。

 

 

それでも彼を非難する方々はこう言います。

「そうだとしてもテレビは公の場であり、彼は発言力もある。自殺した本人、遺族、および日本社会における潜在的な自殺者にも届き得るメッセージである。」

そうですね。でもそれはあなたが彼を非難する理由にはならない。彼を非難していいのは、ご本人、遺族、潜在的自殺者、この3者だけです。「私は「死んだら負け」と言われて傷ついた、精神的にダメージを受けた」という論理だけが彼を非難し得る。「そういうことを言われて傷つく人もいるんだぞ」って、何も言っていないのと同じですよ。どんな発言にだってそう言えますから。その台詞を松本氏に浴びせることで傷つく人もいるんですから。

 

結局、一連の炎上で彼を非難している方の中で、彼以上に社会を良くしていきたいという意思を持って発言している方っているのでしょうか。「オレは言い続けるよ。。。」の後には「日本のことを考えていない人間がどんな非難を浴びせて来ても」という気持ちが滲んでいます。それも覚悟なんてカッコいいものではなくて、そういう人間がたくさんいることに対する悲しみと怒りです。

 

事件自体が悲しく、それに対する反応も悲しいという、二重に悲しいニュースでした。

 

news.livedoor.com

gendai.ismedia.jp

business.nikkeibp.co.jp

 

*1:私の好きなトークにこういうのがあります。

「ファンレターでもな、こういうのが来ることがあんねん。『わたしは松本さんの大ファンです。周りの友達は誰も面白いと言ってくれませんが、私はとても面白いと思います。』・・・これ、うれしいか?俺はな、お前よりも周りの友達みんなが面白いと言ってくれた方が全然うれしいわ!!」

おそらく私が、「松本さんのファンです、YouTubeで毎日聞いてます。」と言っても「そんなのうれしくないわ!」と言われるのは目に見えています。社会人になってからちゃんとCDを購入しましたので、当時のことはお許しください。

名古屋のタイ料理屋「99鶏(ガォガォガイ)」

あるツイートがバズってるのが目に留まりました。最近、「タイ」という文字列には敏感に反応してしまいます。

togetter.com

 

ネットで店名を調べても全然ヒットしません。オープンしたばかりなのでしょうか。Google Mapではかろうじて出てきました。名古屋は一度しか行ったことがなく土地勘がありません。名古屋駅からは少し離れています。

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このツイートの趣旨は『「日本語はわからないからお前がタイ語を覚えろ」というシステム』が斬新であるということで、ツイート(Togetter)に対しての反応も「面白い」という好意的なものです。

 

自分も当然好意的に反応した人間の一人です。しかし同じツイート主がアップしたメニュー表を見ると、日本語で説明が書いてあるし、フリガナが振ってあるし、おまけに食券制なのですね。つまり実際には一切タイ語を発する必要などないわけです。「普段日本語で注文しているタイ料理が現地語だとこう注文するのね、ふーん」という程度のものです。にも関わらずバズっているのはツイートの「盛り方」が上手だったのでしょうか。

 

それはそれとして、気になったのがメニューとその価格です。

麺類、ガパオライス、タイカレー、トムヤムクンは日本人向けタイ料理レストランとして当然として、ソムタム、ヤムウンセン、ガイヤーンあたりのイサーン料理が入ってくるのは嬉しいですね。メニューの1番目にソムタムを持ってくるところが確信犯です(何のだ)。

ソムタム850円、ガイヤーン850円。ビールを付けたら+650円、カオニャオが+550円・・・トータル2,900円、850バーツくらい。一見高く感じますが、各メニューの量次第ですね。ソムタムとガイヤーンが2人でシェアできる量であれば素晴らしいです。むしろ日本経済を心配するレベルです。タイで食べるのとさほど変わらないので(もっと安く食えるとこ沢山あるぞ!ってのは勿論ですが、バンコクでは驚くほどの価格設定ではないという意味です)。

 

これからもタイ料理がガンガン日本に進出してくれることを祈ります。

 

国歌斉唱 in バンコク

何年か前に、国歌斉唱は義務なのか、強制させることは個人の権利侵害になるのかといった議論がありました。まだ問題になってるんでしょうか。大して興味がないので詳細は知りません。

 

さて、朝8時と夕方6時が私のタイで好きな時間です。この時間になると、公共施設(公園や駅など)ではスピーカーから軽快なラッパの音が聴こえてきます。カウントダウンのビープ音が響くと、国歌が流れます。国歌が終わるまでの約1分間、市民はその場に停止しなければなりません。警官が常駐している公園では、警官が笛を鳴らし、寝ている市民は起立させられますし、ランナーは止められます。

 

初めてこの光景を見た日本人は皆、少なからず緊張するはずです。独裁国家のような匂いがし、さっきまで当たり前に享受していた自由がこのひと時は権力に押さえつけられているような気分がします。

 

しかし慣れてくると、この光景がなかなか良いものに思えてくるのです。その一時だけ、皆がタイという国に思いを馳せる。喧騒が一瞬止まる。国歌が終わると皆なんとなくお辞儀をして、生活に戻っていく。このシークエンスがたまらなく美しく見えてきます。

 

タイに旅行に来る人には、是非夕方18時に公園に行ってみるよう勧めています。日中の殺人的な日差しが西日に変わり、涼しい風が吹くこの時間帯の国歌斉唱は格別の風情があります。止まらなかったら撃たれたり逮捕されるわけでもないし、頭を掻いている人やケータイを見ている人もいます。下に貼ったように動画を撮っても怒られはしません(露骨に警官の目前でやったらダメでしょうが)。

 

www.youtube.com

楽しいムーミン一家 ニンニの物語から考える虐待 (第9話 姿の見えないお友達 / 第10話 笑顔がもどったニンニ

物心ついた頃から「楽しいムーミン一家」を観て育ちました。学生時代にふとしたきっかけで再度観る機会があり、両親は素晴らしい作品を見せてくれていたのだなと感じ入ったのを覚えています。先日また観直す機会があったので改めて感想を記します。
 
この連続する2話では、「皮肉屋の叔母さんに育てられて姿が見えなくなってしまった」女の子、ニンニが登場します。これは虐待によって傷を負った子どもが回復していく物語であるということを、今更ながら発見しました。幼少期はもちろん、学生時代に観たときはそのような問題意識がなかったのでしょう。
 
「皮肉」というマルトリートメントと、「姿が見えない」という傷の負い方
ニンニをムーミン家に連れて来るのはトゥーティッキです。トゥーティッキの位置づけはちょっと良く分かりません。それほど重要ではないのでしょう。その叔母さんと何らかの親交がある善良な市民、とでもしておきましょう。ことの次第を皆に説明すると、「皮肉って何?」とムーミンから質問されます。
 
トゥーティッキ「例えばムーミンが遊んでいて花瓶を割ってしまったら、ママはどうする?」
ムーミン「そりゃ怒られるさ。次は気をつけなさいとかなんとか」
トゥーティッキ「そうね、それが当たり前ね。でもその叔母さんはこう言うの。『ダンスが下手だからって、花瓶に当たることはないじゃない』って」
ムーミン「なんてイヤな言い方なんだ!」

  

なんてイヤな言い方なんでしょうね。表現が柔らかいので(特に子どもは)そう感じます。子育てをしている今、この言葉は暴力だということが分かります。「ダンスが下手だ」という烙印を親に押されることがどんなに彼女にとって嫌なことか。しかも「花瓶を割った」という、ただでさえ自分が悪いことをしてしまって落ち込んでいるときに、その言葉を浴びせられるのです。反撃の余地がありません。花瓶を割ってしまったダメな自分、しかもダンスが下手な自分。二重の自己否定を食らうわけです。これはマルトリートメントの一形態です。マルトリートメントというのは広義の虐待を指す言葉で、最近、子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523) | 友田 明美という本で知りました。
会話は続きます。
 
ミイ「それで、ニンニはその叔母さんに嚙みついてやったの?」
トゥーティッキ「いいえ。でも段々姿が見えなくなってしまったの。声もよ。」

 

ミイのボケ的な質問でシリアスになりすぎないようにされていますが、相当に重いシーンだと感じました。子どもの内面から発せられるあの輝かしい光が徐々に弱々しくなり、最後に消えてしまう、そんなイメージが浮かびます。また「消える」という言葉は、「死」すらも想起させます。

 
少しずつ、回復へ 
そのうちドアが空き、ニンニが入ってきます。ここでは宙に浮いた「鈴」しか見えません。皆は優しく迎え入れます。寝床へ連れて行くママが本当に優しい。「果物とジュースはここに置いておくわね。いつでもお食べなさい。」「もう寝るの。早いのね。疲れたものね。」「夜中どうしても寂しくなったら、私を起こしなさい。向かいの部屋にいるわ。枕元でこの鈴を鳴らすと良いわ。」ニンニは首に付けた鈴だけが見える状態で、その揺れ方でyes/noの判断は出来るけど、言葉も発せない。そんな状態でも、ムーミンママは他の子どもと同じように接します。トゥーティッキが「(ニンニを虐めた叔母さんと)正反対だもの」と述べる所以です。
 
翌朝、皆の優しさに触れたからか、靴が見えるようになります。喜ぶ皆。遊びに出かけ、キノコ摘みに興じていると、意地悪でいたずら好きのスティンキーに出くわします。コイツの悪役感、でも憎めないキャラクターはバイキンマン並みに完成されています。「怖くて姿が見えなくなったんだろう。可哀想に、そうなったら一生戻らないぞ」などとニンニを脅し立てます。ムーミン達が反論しながら守ろうとしますが、ニンニの靴はまた見えなくなってしまいます。
意気消沈して家に帰ると、ママが出迎えます。各人の摘んだキノコのカゴを検分し、一通りダメ出しした後で「このカゴは素晴らしいわ。毒キノコもないし、良いキノコだけを、しかも沢山摘んできている。あなたはとても賢くてお行儀が良いのね」とニンニをべた褒めします(本当にキノコ採りが上手なことが、スティンキーと遭遇する前に描写されています)。靴が再び現れ、ワンピースの裾まで見えるようになります。興奮する皆。「可愛い脚なのに地味な服を着るのねぇ」とママがぽつり。
皆が寝静まった夜中、パパが目を覚ますとママのベッドが空です。服を縫い上げているのです。
「もう遅いよ、ママ」パパの声色のなんと優しいこと。
「あぁ楽しかった。久しぶりに女の子の服を作ったわ」声を弾ませるママのなんと嬉しそうなこと。
母さんが夜なべして〜的な自己犠牲の精神ではなく、子どもを思う親の姿の美しさにただ心打たれます。
 
スティンキーという悪意

ママの作ったワンピースとリボンを着て、顔以外はすべて現れ、か細いながら声も出るようになりました。ムーミンたちと森でかくれんぼをして遊びます。このまま回復に向かうかと思いきやスティンキーの再登場。

"Stinky"という言葉の通り、とにかくこいつは嫌な奴なのです。ニンニを言葉巧みにおびき出し、洞穴に突き落として岩で出口を塞いでしまいます。作品を通して色んな回でスティンキーは悪さをしますが、おそらくこの回が最も残酷です。ちょっとやりすぎじゃないか、とさえ思います。一緒に見ていたウチの子どもは半泣きでした。

悲嘆にくれるニンニ。探し回るムーミンたち。洞穴の近くに来る。蚊の鳴くような声で助けを求めるニンニ。それに気づくムーミン。

 

 ニンニ「助けて・・・」

ムーミン「ん?今何か聞こえなかった?」

ニンニ「助けて・・・ムーミン」

ムーミン「助けてって聞こえる。おーい!ニンニ、どこだー!」

ニンニ(ムーミンが近くにいることに気づく)「ムーミン・・・!私はここよ・・・!」

ムーミン「どこだニンニ!声が小さくて聞こえないよ!」

ニンニ「私はここよ・・・!」

ムーミン「もっと大きく!」

ニンニ「私はここよ!」 

 

 

コール&レスポンスの末、とうとうニンニは腹の底から大声で助けを求めることができます。「私・・・こんな大きな声、生まれて初めて出した」と自分でも驚くほど大きな声です。その言葉が「私はここよ!」というのも素晴らしい。否定された自己、消えた姿と声。その状態から世界に向かって「私はここにいる!」と主張できるようになったのです。 無事ムーミンたちに助けられ、ムーミン家に帰るニンニ。まだ顔は見えません。でも、「それでもすごいじゃないか、大きな声も出たし、今度はスティンキーにいじめられても姿が消えることはなかったんだから。もう少しだよ。」とパパが鼓舞します。目に見えた成長だけでなくて、子どもが「できた」ことを認めてあげること。これが子どもには嬉しいし、安心できるんですね。一日たっても顔が見えるようにならなかったことを一番残念がっているのはニンニに決まっているんです。

 

笑顔を取り戻させたもの

皆で浜辺へ遊びに行きます。海を眺めて座っていたニンニがしくしく泣き出します。 

ママ「どうしたの、ニンニ?」

ニンニ「海があまりにも大きいから。」

 

 海があまりにも大きくて泣く、という表現に若干クサさを感じつつも、その次が面白い。今度はママが地平線を見やりながら黄昏ます。 

パパ「どうしたの、ママ?」

ママ「私には海を眺めて感動して泣いたり、心ときめいたりするようなことが随分なくなってしまったわ。」

 

 ボケ役でもあるパパはこれを「ママはドキドキするような体験をしたいらしい。よし、海に突き落としてあげよう」と超解釈します。後ろからそろりそろりと近づいていく。それに気づいたニンニは駆け出し、パパの尻尾に思い切り噛みつきます。

 ニンニ「ママに酷いことをしようなんて、許さない!」 

声を荒げて一喝すると、遂に顔が現れます。正義感と力強さに満ちたその表情には神々しさすら感じられます。顔が見えるようになったことを皆で喜びます。笑顔を取り戻させたのは、他者への愛と、愛する人のために行動する勇気だったのでした。ニンニとママが抱き合うシーンは涙なしには観られません。

 

エピローグ

 

元気になったニンニと会えてトゥーティッキも喜びます。例の叔母さんはまたニンニと住みたいと言っているようで、連れ戻しに来たのでした。ここは大人になった今では不安になるシーンです。また虐待が繰り返されるのではないか。でも、ここでは子どもへのメッセージだけを受け取ることにします。勇気と愛で顔を取り戻せたのだから、もう意地悪な叔母さんなんかには負けないぞ!ということです。それを象徴するように、帰り道で向こうからニヤニヤ歩いてくるスティンキーに向かって思いっきりアッカンベーをして、「フンッ」と去っていくのです。 

 

そうそう、ニンニを洞穴から救い出した後、怒ったムーミンたちはスティンキーを捕まえて洞穴にぶち込むのでした。

ムーミン「ニンニが受けた思いをお前も受けろ!」 

ちょっとやりすぎじゃないか、とここでも思いました。ウチの子も同じように半泣きでした。上で書いたように最後のシーンで何事もなく登場しているのでまあ何とか出られたんだろうということは分かりますが、勧善懲悪・因果応報といったイデオロギーが容赦なく描かれて地上波で放送されていたのはこの時代だからできたのでしょう。今じゃ「スティンキーがかわいそう!」という批判を受けることは想像に難くありません。良し悪しは別として。