季節のない街

山本周五郎にそんな短編集がありましたが、バンコクは季節のない街です。乾季、雨季、暑季なんて分けてはいますが、なんのことはありません。年中暑いです。

ゴルフに行ったんですよ。湿地に背の高いススキのようなものがたくさん伸びていて、そこからバサバサーっと100匹くらいの鳥が飛び立ったんです。そのときおばちゃんキャディが「ノックユ、ナーナーウ、ピーラヌンクラン」って言ったんです。鳥がたくさんいる、こういうのが年一回ある、乾季だ。って意味です。

そのときに、何か無性に詩的な気持ちになって少し感動したんですよね。いつもマイペンライマイペンライ言って何も考えてないようなタイ人からそういうセリフの出たことが。いやあのおばちゃんがどういう気持ちで言ったのかは分からないですけど、この人はいまあの鳥を見て、乾季が来たなぁって感じてるんだなぁってだけで何かグッと来たんですよ。スマホ見てツムツムやってる人より、車窓に映る月をボンヤリ眺めてる人の方が、何か美しいじゃないですか。佇まいとして。

そういう風に考えると、自分から見ると季節のない街でも、タイ人には違って見えてるかもしれないなと思うわけです。どんな風に見えてるんだろう。